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立教大学公開講座「トールキンとゲルマン神話」レポート

 

https://www.rikkyo.ac.jp/events/mknpps000000kjua.html

 

106日、立教大学内で行われた公開講座に参加してきたレポ。

講師はボン大学のドイツ学者・北欧神話研究者であるルドルフ・ジーメク先生。

通訳に信州大学准教授の 磯部 美穂 先生。

 

(私はドイツ語まったくの未履修なので、完全に通訳頼りです。ところどころ主旨やニュアンスが危うい箇所があるかもしれません。雰囲気だけでもお伝えできれば幸いです)

 

 

パワーポイントと解説を使いつつ、自己紹介もそこそこに講義スタート。

うろ覚えですが触りに「トールキンのファンってどれくらいいますかー?」って聞いていたように思うのですが、
パワポにケレボルンとガラドリエル様の姿を映したのも数秒……

 

「今日はエルフの話はしません!」

 

と、バッサリ()

3つの大きなテーマに沿って、徹底して「トールキンとゲルマン神話の関わり」を探っていきます。

 

 

 

1:トールキンが元にした本について

 

トールキン研究でもよく言われる、発想の元ネタ神話群たちから触れて行きます。
パワポが全部ドイツ語で控え切れなかったので、わかった範囲で挙げると・・・

 

『ヴォルスンガ・サガ』

『スノッリのエッダ』

『ベオウルフ』

『チョーサーのカンタベリー物語』

『ニーベルンゲンの歌』

『オレンダール(Orendel)(中世のドイツ語詩)

『デーン人の歴史』(ラテン語の歴史書)

 

etc

 

よく見るタイトルから、ちょっとマイナーなものまでざざっと列挙。

例えば『エッダ』の一部「巫女の予言」という下りを見てみると

 

 

 10.
そのとおりに、ドワーフたちすべての中で一番偉いモーズソグニルが生まれ、2番目にドゥリンが生まれた。人間に似たこの二人は、ドゥリンの言によれば土からたくさんのドワーフを作った。

11.
ニーイとニージノスノリ、
アゥストリとヴェストリ、アルショーヴル、ドヴァーリン
ビヴォール、バーヴォール、ボンブール、ノーリ
アーンとアーナッル、オーイン、ミョズヴィトニル

(中略)

13.
フィーリ、キーリ、フンディン、ナーリ・・・・(後略)

 (伊藤盡『指輪物語』p71)
※講義レジュメより引用。

 

 

・・・うん、見たことある名前が沢山。

全部読み上げながら先生も半笑いだったよ、この下り。

 

このあたりのことは『ロードオブザリング 「指輪物語」完全読本』(リン・カーター著、角川文庫)にも書いてあったので、気になった人はこっちでも概要把握できるかも!

  Amazonリンクはこちら→ http://amzn.asia/d/gOWxnNV

 

 

 

2:オーディンの反映

 

オーディンは北欧神話における主神。

気象神、魔術の父、賢者、老人、戦いの神etc

とにかくポジティブ・ネガティブ色んな側面を持つ神様です。

 

ジメック先生によれば、このように様々あるオーディンの側面を、トールキンは色んなキャラに振り分けて居るとのこと。

今回はガンダルフ、サルマン、サウロンの三例を挙げておられました。

 

ガンダルフ……賢者、長髯、灰色の髯、目深に帽子を被った者 etc

 

サルマン……放浪者(これはガンダルフもでは?と個人的に思う)、知識を欲する者、魔法に長けた者 etc

 

サルマン……全てを見透す神、高座につくもの etc

 

などなど。

 

オーディンのケニング(※こういう「◯◯するもの」みたいな厨二感溢れる二つ名的なアレ)はもっと沢山あって、ウィキにも載ってますので(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3)

それを見ながらひたすらどの束キャラに当てはまりそうか考えるのも楽しいと思います。

 

(個人的には「誘惑に長けたるもの」とかめっちゃサウロンぽいなと。)

 

サウロンに関しては「オーディンだけじゃなくルシファーの要素もある」ということを、ジメック先生は仰っていました。

(ルシファーはむしろメルコールの方じゃねーかなーなどと思ったり………いいえ、シルマリルまで広げるとキリないからやめましょう!)

 

 

 

3: トロルの変遷

トールキン世界でのトロルといえば、巨大で知能は低いが力のある悪いモンスター。

このイメージは、古い神話からあるかというとそうでもないらしく

トールキンの場合は、色々いる低級モンスターの一つにすぎなかったトロルを

ホビットやドワーフ、エルフやらに並ぶ種族の一つとして発展させたという感じらしい。

(すいませんこのあたり通訳の聞き取りも曖昧だったので違ったらご指摘ください)

 

このセクションでは地域や時代によって様々に変化するトロール像を紹介して頂きました。

 

ノルウェーのおみやげ屋さんや観光地で見られるキャラクター化された可愛いトロールや、

子供向けの絵本などで発展してきた親しみやすい人型のトロール

もちろんトーベ・ヤンソンのムーミンまで。

 

時代によって様々なファンタジー(この場合は願望とか理想という意味かな?)を反映して、時に親しみやすく、時に肉感的に、時に政治的な場面で恐怖の象徴的に描かれてきたトロールたち。

 

こういう事例を見ていくと、あくまでトールキンは、中世期に受容されていたトロール像(=人を食べる悪いモンスター)という側面を発展させたのかなーという印象が深まります。

 

とはいえ、『ホビット』のちょっとコミカルな三体はともかく、
『指輪物語』の方だと知能ある独立した一種族という所感は薄れる気がするので(なんか攻城兵器A,Bみたいな使われ方じゃん?)
「他に並ぶ一種族」かと言われると個人的にはうーーーーん?? と首を傾げたくはなる箇所。

そこんとこどうなんでしょう、創造主のメルコールさん?

 

 

 

4:質疑応答

聴講者から出た質疑応答のまとめ。

質問の要約や記憶が若干曖昧なので、適宜訂正していきますが、なかなか興味深い質問が出ていました。

 

Q:神話に見られるアーキタイプと現代の創作物との関連に関してどう考えるか

A:宗教の分野ならともかく、文学研究としては「テキストがどう受容されるか」に重きを置いているので、それについてはカバーしていないとのこと。

(この質疑は結構複雑だったのでだいぶ端折っちゃってます。どなたか情報求む!)

 

 

Q: オーディンの色々な要素を複数のキャラに振り分けた意図とは? またネガポジ様々な側面を持つオーディンを、当時の人々はどう信仰していたのか?

A: 完全にポジティブなイメージが善側キャラに、ネガティブなイメージが悪側に振り分けられているかというとそういう訳でもない。(ガンダルフにしろサルマンにしろ様々な要素でできている。)

信仰に関しては、二つの時代に分けて考える必要がある。

完全なる原始異教時代に関してはわからない。

キリスト教の伝播以降に関しては、オーディンの側面はやはり善悪が混在したまま受容されていたと考えられる。

 

Q:トム・ボンバディルの源泉ってどこだと思う?

A:正直わからん。(ですよねーーー!)ただ、仮説を述べるならば、1415世紀ごろに自然の力の象徴として多く表象された「グリーンマン」があるのではないか?

 

補足:グリーンマンとは中世の教会建築なんかにみられる葉っぱで覆われた人のモチーフ。ケルト神話などの森林・樹木へのアニミズムの名残と考えられている。

 

 

 

Q:トールキンは「イギリスのための神話」を作ろうとしたと手紙にも書いていますが、元ネタを探ると北欧やゲルマンのものが多くヨーロッパ全土に渡るように思えるのですが…  イギリス的な要素というのはどのあたりなのでしょうか?

A:まったくその通りで、指輪物語は95%スカンジナヴィア、5%がイギリスです。(今回の個人的ハイライト。先生キレッキレでした 笑)

もちろんケルト的な要素や、イギリスの伝承の要素もあるが、それはキッカケ(5%)に過ぎないという印象だそう……

 

 

 

Q:オーディンの描写で「アジア(トロヤ)から移住してきた」というものが挙げられていたが、その根拠になる文献や研究はありますか?

A:ヨーロッパ全土において「アジアにルーツを持つ」という考えはメジャー。スノッリ以前の歴史家もそういうことを述べているし、フランケン人という民族はやはり起源はアジアにあふと自称していた。

先生自身も「トロヤからグリーンランドへ」という論文を書かれているそうです!(宣伝)

 

 

Q:オーディンが反映されるキャラとして、茶色のラダガストは?

A:もちろん入ると思います。

 

 

Q:『指輪物語』を読んでると植物の描写が多いように思いますが、何か神話との関わりは?

A:あまり無い。ゲルマン神話において植物の描写はあまり重視されていない。描写が詳しいのはむしろトールキン個人の拘りに由来するのではないか。

 

 

5: 全体的な感想

今回はとにかくゲルマン神話もといエッダやサガに書かれるテキストと、トールキン作品との繋がりに重点を置いていました。

エルフの元ネタや、ドラゴン退治のくだりの類似なんかはら今までもよく言われていたけど

オーディンの要素の反映というとはこの講義で初めて聴いたのでとても興味深かったです。

 
先生の著書にも手を出してみたいところですが、残念ながら英訳されているのは1冊しか無いみたいで・・・
今回のお話はこちらの本(ドイツ語版のみ)に詳しく書かれているようなので
トライしてみるのも良いかもしれません。

https://www.amazon.co.jp/Mittelerde-Tolkien-die-germanische-Mythologie/dp/3406528376/ref=asap_bc?ie=UTF8


あーーー!ドイツ語がわかればなーーーーーーーー!!! 

 

 

 

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