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「〈物語の世界〉古英語叙事詩とホビットの冒険」受講レポート(前編)

慶応義塾大学 HAPP新入生歓迎講演会「〈物語の世界〉古英語叙事詩とホビットの冒険」/伊藤盡先生
http://lib-arts.hc.keio.ac.jp/event/476

映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』の翻訳監修も務めていらっしゃる伊藤先生の講演。慶応の新入生に向けてという形ではあるものの、誰でも参加できる公開講義ということでしたので参加してきました。

 久々に「英文学」というアプローチでトールキンの著作に触れて、とても興味深いお話を聞けましたので、簡単ではありますが以下にレポートを。

トールキン関連のものを読み込まれている人には「そんなのあたりまえだよ!」という内容もあるかと思いますが、できるだけ講義の流れに沿って書いていきたいと思います。

 

 

 まず全体の流れがこちら。

 

0.イントロダクション

1.古英語叙事詩とは?

2.トールキンと『ベオウルフ』

3.『ホビット』におけるファンタジー生物

4.古英語叙事詩とホビットの関連

5.まとめ& 質疑応答

 

 タイトルがズバリ「古英語叙事詩とホビットの冒険」なので、英語という言語のざっくりした歴史や、トールキンの研究・著作との関連をあげつつ、中世文学の面白さを学生さんに紹介するというのが本講の主旨。

 

 

 

◆古英語叙事詩とは?

 

・・・「どんなもんぞや?」という人のために、『ベオウルフ』の冒頭の一説(原文そのまま)を朗々と読み上げる伊藤先生。

 

Hwæt! We Gardena     in geardagum, 
þeodcyninga,     þrym gefrunon, 
hu ða æþelingas     ellen fremedon. 
Oft Scyld Scefing     sceaþena þreatum, 

(オンラインテキスト「古英詩ベーオウルフ」より引用

http://www.sacred-texts.com/neu/asbeo.htm

聴け! 我らは 槍のデーン人たちの 古の日々の
民の王の 勲しを 聴いた
いかに 当時 高貴な者らが 勇気を示したかを
(講義レジュメより引用)


いかにもこれから伝説を語らんとする堂々とした語り口ですね。
ちなみに『ベオウルフ』の簡単なあらすじは以下の通り。


――勇者ベオウルフは、デネ(デンマーク)の王が怪物グレンデルの襲撃に悩まされているという噂をききつけ、怪物退治にのりだす。見事グレンデルを討ち取り、さらにはその母親である怪物も殺し、ベオウルフは王さまになりました。めでたしめでたし。
・・・・と思っていたらベオウルフが年老いた晩年のこと、ドラゴンに国を襲撃されます。
老年ながらベオウルフ、勇猛果敢に立ち向かい、相討ちの形で見事ドラゴンを倒し
息を引き取りました。残されたものは彼のために宝をすべて一緒に埋葬し、立派な塚を築いたのです。


2007年にロバート・ゼメキス監督によって『ベオウルフ/呪われし勇者』として映画化もされましたので
割と知名度も高い物語かと思われます。


(ちなみにこ古英語朗読。後の質疑応答でも出たのですが、音声で聞くとなんだかエルフ語の響きみたいなんです。映画のファンだと「おお!」と思わされるのでは?)

 

でも待って?
古英語ってことは「英語」でしょ?
なんでデーン人(デンマーク)が出てくるのさ?

・・・という人のために、軽く押さえておきたいのがイングランド、つまりグレートブリテン島の歴史。

高校生の世界史もびっくりな超ザックリ認識で行くと、

 

【ケルト人→ローマ人進出のち衰退→アングロ=サクソン七王国→デーン人(デンマークの人々)の侵入→デーン朝成立→ノルマン=コンクエストでノルマン朝の成立(以下省略)】

 

と、まあこんな感じ。

以下は伊藤先生の言葉をお借りしますが、

 

TVも映画もない中世において、当時のイングランド人が「聴け!我らは槍のデーン人の古の日々の民の王を~」なんて始まりの物語を聴くっていうのは、ちょうど日本人が三国志の英雄の物語をうきうきと聴くよりももっと身近で、心躍る一種のエンターテイメントだったのでは?

 

・・・という例えがストンと心に落ちました。

 

ちなみにこの辺のヴァイキングだのデーン人だのというくだりに、幸村誠の漫画『ヴィンランド・サガ』を引用していらっしゃったのですが、学者ならではの細かいツッコミには笑わせていただきました。(「主人公が持ってる剣に彫ってあるルーン文字の綴りが違う!」とかね)

 

 

◆トールキンと『ベオウルフ』

 

トールキンはもともと古英語、中世文学の研究者でした。
英語だけにとどまらず、ゲルマン、ゴート、アイスランドなどの言語・文学の両方に長けた人物です。

それは例えば『指輪物語』や『シルマリルの物語』と、先にあげた『ベオウルフ』、フィンランドの『カレワラ』、北欧の『エッダ』、アイスランドの『サガ』etc・・・を読み比べてみると
さまざまな共通項が見つかるのでなるほどと思えるはず。
(後で挙げる『ベオウルフ』における龍と、スマウグの共通項など。
個人的には『シルマリル』に登場するトゥーリンの物語なんていろいろ比較するのにすごく向くのでオススメしたいのですが割愛)

そんな彼はオックスフォードの古英語教授職に応募する際に最大の「ウリ」にしたことがありました。
応募書簡の文章を引用しつつ
「言語学と文学研究、この隣接する二つの学問分野の発展に全力を尽くしますよ」と。

もうちょっと言うと、文学研究って<言語>からのアプローチと<物語の内容>からのアプローチどっちからも行かないとだめじゃない?

・・・というのが主張だったようです。

 

なるほど、こんなトールキンだったからこそエルフ語に代表される複雑な言語体系を物語に組み込めたのかも。考えてみれば登場人物の名前の響きだって、エッダやサガに登場するものに似ていたり、そのままのものもあったり。

「トールキン作品を研究するぞー!」
と、思うと話の筋とかテーマとか以外に、<言語>って側面でも理解を深めないと行き詰る
という話を伊藤先生もされていましたが、それもそのはずですね。
作者本人がそういうポリシーのもと研究してきたひとですから。

 

かくして見事教授職を勝ち得たトールキンが、あるテストの採点中に偶然「白紙の答案」を見つけ、そこに書きだしたのが『ホビットの冒険』というのは有名なエピソードですね。

 

「地面の穴のなかに、ひとりのホビットが住んでいました」(『ホビットの冒険』瀬田貞二訳、岩波文庫)

 

もはやお馴染となったこの「ホビット」という単語。種族。

<言語(英単語としての”Hobbit”>と<内容(どんな外見、どんな特徴の種族なの?)>という両面から、トールキンの作品世界に登場するファンタジー生物をもう少し見ていきましょう。

 

(後半に続く)

 

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